未来をより良く生きるために

27 10月 自分を大切にする①

10月4日

 

「朋子さん、血液センターから検査結果来ました。異常なしでした。」

「それはおめでとう、ってこともないか。若いんだしね。」

「私も行ってみたかったな。痛かった?」

「思ったほど緊張もしなかったし、大丈夫でした。やよいさん、冬に一緒に行きます?」

「じゃあ、挑戦してみようかな。」

 

「武志くんがここに来て、早いもので半年ね。」

「そうですね。いろいろお世話になりました。これからもよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく。西野先生の宿題、うまくできてるのか自信ないけど。」

「で、10月のテーマは何にするの?」

「それはもう決めてるの。どちらかというと、やよいのためのテーマと言った方がいいかな。」

「私のため?」

「そう、大切な時間を無駄にしない方法よ。」

「時間を無駄にしない方法ねえ、つまり私が時間を無駄にしてるってこと?」

「かなりね。」

「うーん、そろそろ答え教えてよ。」

「整理整頓よ。」

「せいりせいとん?」

「そう、せいりせいとん。」

「整理整頓すると時間を無駄にしないということですか?」

「その通り。やよい、あなたの部屋思い出してごらんなさい。あれがない、これはどこにやった、大学に忘れてきたから取ってくる、大学になかった、部屋にあった、、、人生の3分の1くらいは探し物をしてるんじゃない?」

「めんぼくござらん。」

「部屋をきれいに整理整頓していれば、それだけで時間短縮になるし、無駄もなくなるでしょ。今月は、その修行をみっちりしてもらおうと思う。武志くんは大丈夫なほう?」

自分の部屋を思い出して、顔が赤くなるのがわかる。

「いえ、やよいさんと同じテーマで良いように思われます。」

「二人とも日本語が変になってる。けっこう痛い所をつかれたようね。」

「返す言葉もござらん。」

「ところで、このテーマは西野先生じゃ指導できないな。先生の机の上、信じられないくらいすごかったもの。時々隣の先生の机に雪崩れが起きてた。たまに職員室に行くと、別の先生から『おい、担任の机、何とかしろ。ちゃんと指導しておくのが生徒の仕事だろう。』なんて言われちゃうしね。きっと西野先生は、人生の7割くらい探し物してるよ。」

 

人生の3割であれだけやってるじいちゃんが逆にすごいと思ったが、ここで言ったら怒られそう。

 

「整理整頓はね、それ自体が時間短縮や無駄をなくすことにつながるけど、その先にある心の安定が最大の贈り物よ。」

「きれいな部屋にいると落ち着きますよね。」

「そうよ。たとえばこのカフェ。できるだけシンプルにしてるのは、お客様の心の安定を考えてるから。ぐちゃぐちゃの部屋でもコーヒーの味には変わらない。でも、それじゃほんとにおいしいコーヒーは提供できないよ。それに、誰だって落ち着かないカフェに行こうと思わないからね。」

「さすが、整理整頓を商売にしている人の言葉、説得力ありすぎです。」

 

「では、最初の課題は、今日、あるがままの部屋を写真に撮る。まずは現状の認識から始めましょう。」

「乙女の部屋を公開するのですか?それはあんまりでございます。」

「問答無用!乙女らしくなってから言いなさい。」

「なんか、今日の朋ちゃん怖い。」

「そう言われると、ますます闘志がわいてきた。」

 

◇ ◇ ◇

 

あるがままの部屋を写真に撮る。ベッド、ぐちゃぐちゃだな。布団が、がばっと起きたそのままの形。机の上も、ほとんど机の板が見えない。かなり恥ずかしいけど、とりあえず1枚。写真撮ったから片付けようか。いや、この際だ。全部撮ろう。

本棚、よく見ると高校受験の問題集がまだ入ってる。半分以上は、もう読まない本。

机の引き出し、大きい方はきれいにしてる。毎日使うクロッキー帳と鉛筆、消しゴム。ここは良い。となりは、シャーペンやら消しゴムやら、使いかけが多いな。

2段目は久々に開けた。イヤホンやら電池、なぜか鉛筆けずり。小学校の時使ってたもの。

3段目、ぐちゃぐちゃのプリント。そうそう、とりあえず押し込んでおく場所だった。

 

タンスの中も撮っておくか。きちんとたたんでいるわけじゃないけど、こっちはまあまあかな。でも、よく見るとぜんぜん着てない服もある。

押し入れ、ここはもう自分でも何があるのかわからない、暗黒地帯。これも全部やるのか。だんだん気が重くなってきた。

 

ひと通り撮影を終えて、とりあえず机の上のプリントや本を片付ける。久々に何もない机の上。そこにクロッキー帳を広げる。こんなに広くて使いやすいじゃない。毎日狭いところで苦労してたのがばかみたい。やっぱり整理整頓、大切だな。

 

◇ ◇ ◇

 

「かあさん、ちょっと部屋の片づけしてみるから、段ボールもらえる?」

「めずらしいわね。小屋にあるから、良さそうなの使っていいよ。」

「ありがと。」

「これからやるの?」

「一気には無理だから、少しずつやってく。とりあえず今日は段ボール準備するだけ。」

「がんばってね。かあさんからひとつ助言すると、一気にやっちゃう方が時間かからないかもしれないよ。毎日少しずつって考えると、いくらやってもきれいにならなくて、そのうちやめちゃうから。」

「うん、なるべく早い時期に決着をつけるよ。」

 

思考と行動「片付けの大切さ」へ

本の紹介 「人生がときめく片付けの魔法」近藤麻理恵

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小説「高1の春に」

自己紹介

縁あってたくさんの中学生と接してきましたが、まだ人生の準備運動の段階であきらめている子のなんと多いこと!そうじゃないよ。人生は中学卒業からが本当のスタートだよ。いくらでも自分自身と自分の人生を変えられるよ!
そんな思いをもってページを立ち上げた中年のおじさんです。

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