1月15日
「朋子さん、あけましておめでとうございます。」
「武志くん、いらっしゃい。新年早々頑張ってるようね。」
「はい、何とか手帳も使っています。でも、何を書いたらいいのかわからなくて、早くも飽きちゃってます。」
「どんなこと書いてるの?」
「ほら、朋子さんのアドバイスで、その日にやるものを書くってあったじゃないですか。でも、毎日毎日書くのは『デッサンする。』『英語の勉強する。』だけで・・・。」
「それで、書いたことはその日にやってるの?」
「まあ、一応は。」
「すごいじゃない!!! それのどこがダメだっていうの? その日にやるべきことを書いて、その通りに実行できたら、もう私がアドバイスすることなんか、何もないよ。そのまま続ければ大丈夫。」
「でも、なんかパッとしないというか、惰性になってる気がします。」
「惰性であっても続けないより百倍いいよ。それに、一見すると地味で飽きがくるようなことを我慢して続けることが、結局は成功への近道だと思う。」
「朋子さんにそう言われると、ちょっとホッとします。」
「そうそう、その調子で頑張ってね。」
「ところで、武志くんこれ見て。」
「はあ、募金箱ですね。」
「こっちが募金の説明書」
お年玉の10パーセントを募金しませんか。 お正月にお年玉をもらった子どものみなさん。 もしくは、大人だけどお年玉をもらっちゃったみなさん。 ほんとうにおめでとうございます。 みなさんは、とっても幸せです。 なぜって、世界にはお年玉なんてもらえない人たちが多くいるのですから。 もちろんお年玉の習慣はきっと日本だけですが、 小遣いだってもらったことのない人、 それどころか家にお金がない家族だってたくさんいます。 困ってる人がたくさんいるのです。 そんな人たちに、幸せを10パーセントだけおすそ分けしませんか。 寄付の目的は2つあります。 ひとつは、「自分以外の人が幸せになる手助けをする。」ということ。 もうひとつは、「自分自身が幸せになる。」ことです。 「自分自身が幸せになる。」の中にはいくつかの理由があります。 ①寄付をした自分が気持ち良くなる。 ②周りの人を観察し、助けようとする気持ちが育つ。つまりいい人になれる。 ③お金持ちになれる。 なぜ寄付したのにお金持ちになれるか、不思議でしょ? 私も不思議です。よくわかんないです。 でも、かつて大成功を収め、大金持ちになった人の多くは、 収入の10パーセント程度の寄付をしていたそうです。 お金持ちになりたいのなら、 お金持ちがやっていたことを真似すればいいですね。 ちょっと強引な説明だったかな? でも、実際に寄付をしてみて、将来の自分がどうなるか確かめるのも楽しいです。 本当にそうなったら、喫茶「シエロ」のことを思い出してくださいね。 この募金箱に入ったお金は、特に希望がなければ、今回はユニセフに送ります。 もし、寄付をしたい団体があれば、マスターに話をして下さい。 募金は通年で受け付けますが、とりあえず1月末には金額を確かめて送金します。 みなさんのご協力をよろしくお願いします。 |
「前に話していた1割募金、やるんですね。」
「そう、今年になって高校生のお客さんも増えてきたし、こんな募金箱を置いてみるのもいいかなって思って。
そうそう、武志くん、私の店の売り上げに貢献してくれてありがとうございました。」
「朋子さん、なんですかそれ。」
「武志くんが来てくれたから『高校生スペシャル』なんてメニューを考えたわけだし、それでお客さんが増えたんだから、武志くんのおかげ。永久フリーパス券あげてもいいくらいよ。」
「そう言ってもらえると、ちょっとうれしいです。でもフリーパス券なんてもらったら、じいちゃんから怒られます。」
「あげるって言ったわけじゃないよ。『あげたいくらいっ!』」
「そうでした。」
僕が朋子さんの時間を奪っているようで、迷惑かけてるような罪悪感が正直あった。でも、僕もこの店に貢献しているって聞くと、素直にうれしい。実際に連れてきたのは、研一、和子、それから陸上部の面々。それくらい。でも、メニューひとつでお客さんの数って変わるんだな。
おもしろい、もっといいアイディアはないだろうか。
「ところで、和子ちゃんは元気?」
「はい、時々駅のホームで話しますけど、ぴんぴんしてます。今回の手帳の件では、和子に選ぶの手伝ってもらったし、あいつには頭があがらないって感じです。4月からちゃんと手帳つけてるし、将来の理想の姿とか1年の目標とか、けっこう前向きに書いてて、なんか同じ人間と思えないくらい。あいつに追いつくなんてことは永遠にないでしょうね。」
「あらあら、ずいぶん控えめな物言いね。
でも、和子ちゃんも武志くんから影響を受けて、頑張っているような気がするなあ。」
「そんなことないですよ。あいつはほんとにスーパーマンですから。」
「まあいいわ。こんどまた連れてらっしゃい。」