12月10日
「ねえ母さん。僕の高校にかかる費用だけ、教えてもらえる?」
「高校に納めてるお金のこと?」
「うん、そういうこと。」
「PTA総会で集金のお願いが出たけど、ちょっと待ってて。」
「確か、月2万円くらいじゃなったっけ。」
「ええと・・、そうそう、年間で23万円。」
「やっぱり月2万円くらいだね。」
「2万円分勉強やる気になった?」
「もう2万円以上頑張ってると思うけど・・・。学校に払うもの以外では、どれくらいかかってる?」
「入学の時に、教科書、制服、体操着、それから電子辞書買ったでしょ。なんだかんだで12万出したわよ。」
「そんなにかかったんだっけ。」
「武志が忘れてるだけ。他には定期代。あれも結構高いよ。半年で4万円だから、1年で8万円。」
「部費は、月2000円だよね。」
「そう。だから1年で24000円。それに部活のジャージ、ウインドブレーカー、試合用のシャツとパンツ、スパイク。そんなものかな。これで5万円くらいだったかな。」
「うん、そのくらいだった。」
「それから、県大会で2泊した時の費用、24000円。」
「部活もけっこう高いね。これで、全部でいくらかかったことになるかな。」
僕は、スマホの電卓を操作した。
「うわー、50万円越えてる!!」
「こうやって改めて計算してみると、親の有難味がわかるんじゃない?」
「返す言葉もございません。・・・50万かあ・・・。」
「ちょっと待ってよ。まだあるわよ。」
「さすがにもうないでしょ?」
「スマホ代。それから小遣い。」
「小遣いまで計算しちゃう?」
「せっかくだし、武志にいくらかかってるのか、きちんとさせましょ。」
こんなこと言いだして、失敗した。密かに自分で計算すべきだった。
「スマホ代、いくらだったか覚えてる?」
「確か、4万円くらいで、分割して毎月の料金と一緒に払うんだよね。」
「そう。月々の使用料が、だいたい7000円で、スマホの分割払いが4000円。11000円ずつ払ってることになるから、一年で、13万2000円。それから、小遣いが3000円×12で、36000円。お年玉も入れる?」
「もう勘弁して下さい。」
「まあいいわ。今のところ、69万6000円ね。」
「なんだか、クラクラしてきた。」
「私は楽しくなってきちゃった。」
「母さん、ほんとは性格悪い?」
「小遣いは少ない方だと思うけど、その分本やペンを買ってあげてることもあるでしょ?他にも母さんも忘れてるものもあるだろうから、月6万てとこかな。」
「月6万円ということは、3年間だと・・・216万・・・。」
「3年生になってごらん。大学入試の費用がプラスになるわよ。参考書、受験料、大学までの交通費、宿泊費、だんだん母さんもクラクラしてきた。」
「なんとなく高校生してるだけで、お金ってかかるんだ。」
「だから、その分しっかり勉強しなさい。」
「そう来ると思った。けど、今はその通りだって実感するよ。」
◇ ◇ ◇
「父さん、あのさあ、僕って大学進学してもいい?」
「おう!大学かあ、あれはいい。青春真っただ中って感じだな。」
「かなりお金かかりそうだけど、大丈夫なの?」
「私立の医学部なら無理かもしれん。・・・いや、医学部に入れるなら、武志に投資しておくか。どっちゃり儲けたら、利子つけて返してくれればいいわい。」
「医学部行かねえし。・・でも、東京の私立には行くかも。」
「おう!東京かあ。あれはいい。」
「父さん、東京の大学だったの?」
「いや、地元。」
「じゃあ、なんでわかんの。」
「東京の大学行った友達のとこに、何回か遊びに行ってな、ちょっとだけ大学で一緒に講義聞いたり、夜の大都会で遊んだりしたわけよ。その時思ったねえ。俺も東京の大学行けば良かったって。
そうだ!武志の大学を許可しないで、父さんが東京の大学行っちゃおうかな。」
「何考えてんの。母さん置いていけないくせに。」
「うおーっ!!そうだった!!」
高校の3年間だけで200万円をこえることが判明した。そんなに安くないとは思ってたけど、想像以上だ。東京の大学行くと、1000万かかるって言ってたよね。いっせんまん・・・そんなに大きなお金を僕が使ってしまうのか。まったくイメージがわかないし、信じられない。でも、冷静にきちんと計算すると、こうなるんだろうな。
大学に行くことって、ほんとに必要なのだろうか。高校を卒業して働けば、大学生より4年も早くお金がもらえる。おまけに1000万円も使わずに済む。自分のやりたいことができるのなら、その方がいい。
だけど、大学生の経験もしてみたい。なんとなく高卒よりかっこいいし。
もし、我が家がすごい大金持ちなら、こんなこと悩まないだろうな。
お金持ちになりたい。