未来をより良く生きるために

37 12月 お金のこと①

12月2日 

「それじゃあ、いただきまーす。」

「すき焼き、久しぶりだね。」

「念押すけど、ひとり3枚くらいしか肉ないからね。」

「わかってるって。どれどれ、、、うわー、うまっ!!」

「私の分食べないでよ。」

「肉、少なくてなんか申し訳ない感じ。」

「いやいや、その気持ちがうれしいもんだよ。肉がなくなったらネギと豆腐で腹いっぱいにすればいい。」

「武志にごちそうしてもらうなんて夢みたいだな。もう立派な大人だ。父さんはうれしいぞ。」

「おおげさ。」

「でも武志、せっかくの初給料なんだから、使いたいものあったんじゃない?」

「ちょっと経験したくてバイトさせてもらっただけだし、カフェの朋子さんからも『初月給で両親にプレゼントなんて話、よくあるね。』なんてプレッシャーかけられちゃって。」

「朋子さんにも感謝だな。」

 

「で、11月はいい勉強になったかい?」

「うん、じいちゃんの家に行った時も、けっこういい勉強になった。研一も『また遊びに行こうかな。』って言ってた。」

「いつでもおいで。よしっ、もう少し囲碁の力もつけておかなくちゃ。」

「すき焼きおごった感想は?」と、母さん。

「うん、それがね、お金って大事なんだなってこと考えた。」

「それ、どういうこと?」

「こっちから頼んだバイトだし、2食付きということもあって4000円のバイト代だったんだけどね。すき焼きの肉を買ったら全部なくなっちゃったわけでしょ。一日働いて、家族プラスじいちゃんの晩御飯にもならないんだなって、けっこうショック受けてる。」

「どや、父さんの実力に気づいたか。」

「うん、素直にすごいなあって思ってる。家族が普通に暮らしていくのに、いったいどれくらいお金がかかるのかな。なんか想像つかない。」

「そうね。もし、三食全部が外食だったら、家族4人で一日1万円にはなるわね。」

「ガス、電気、電話、ネット接続料、車のガソリン、それから、武志の通学定期、武志と美紀の学費、えーっと、、、そうだ、ビール代!」

「ビール代って、ひと月いくらくらいなの?」

「それだけは秘密。下手に公開して事業仕分けされたらたまらん。」

「衣類、これは毎月ではないけどね。それからスマホの料金。これ、3人で2万円近いわよ。」

「美紀のクリスマスプレゼント代も忘れないでね。それからお年玉。」

「美紀は中学生だから、もうサンタは来ません!!」

「父さんがサンタだって知ってるんだから、今年もお願い!」

「いいえ、父さんはサンタではありませんっ!!」

 

「いったい、お金っていくらあれば生きていけるのかなあ。」

「それは人それぞれでしょ。」

「平均すると、どれくらいなの?」

「どこかの記事で、生涯賃金は2億くらいだって覚えてるけど、これが普通なのかすごいのか、よくわからん。」

「父さんは?」

「そこ、聞くか?」

 

「武志に言われてみると、お金のことってすごく大切なのに、きちんと話をすることってあまりないね。じいちゃんが教員になった時も、『給料はこれこれです。』なんて説明なかったような気がするよ。いや、忘れてるだけかな?」

「父さんは、今の会社に応募するとき、『初任給はいくらで、他の手当てはこうで。』と、しっかり説明あったよ。」

「うーん、じいちゃんの場合は、『お金の話をするなんて、はしたない。』みたいな感覚あったかもしれないな。」

「なんだか、聞きにくい話になっちゃったね。」

「そうだな。友達同士で、『君の家って年収いくら?うちは8千万だけど。』みたいな会話したら、一気に友達無くすね。武志、ストレートにそんなこと聞くんじゃないぞ。」

「わかってるって。そんなにアホじゃないつもり。」

◇ ◇ ◇

 違う角度から考えるって、かなり幅の広い課題だって感じる。

最初は知らない人について考えることからスタートした。

それが、じいちゃんの立場になったり、カフェの店員を経験したり、いろんな立場で考えた。

最後はお金のこと。

父さんが仕事してお金を稼いでくることは知ってたし、それが当たり前だと思ってた。

今でも、必要な分だけお金は出てくるような気がする。

お金持ちじゃないけど、とりあえず不自由しない我が家?

家にいくら貯金あるのかな?

そんなこと考えちゃいけないのかな?

朋子さんに聞くのも失礼だよね。

でも、なんか気になる。

お金って、たくさんあれば幸せだよ。きっと。

でも、お金の事だけ考えて生きてる人って、なんかいやな人に思える。

 

とりあえず、僕の月収は3000円のお小遣い。

交通費と学費は別に支給される。

学費って、一年間でいくらくらいかな。

ちょっと失礼かもしれないけど、やっぱり朋子さんに聞いてみよう。

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小説「高1の春に」

自己紹介

縁あってたくさんの中学生と接してきましたが、まだ人生の準備運動の段階であきらめている子のなんと多いこと!そうじゃないよ。人生は中学卒業からが本当のスタートだよ。いくらでも自分自身と自分の人生を変えられるよ!
そんな思いをもってページを立ち上げた中年のおじさんです。

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