10月6日
武志くん 部屋の写真、見せていただきました。 私が予想していたよりはきれいです。(だって、比較対象がやよいと西野先生ですから。) でも、本気で整理整頓したら、かなりかかりそうですね。 では、次の指令を出しましょう。机の引き出しの、どの段でもいいですから、ひとつ選んでください。今日はそこだけ集中攻撃です。えっ、何をやるかって?それは簡単です。過去3か月の間、一度も使っていないものを、箱に詰めて下さい。例外は、なしです。過去3か月間で使ったものだけを残して下さい。くどいようですが、例外は、なしです。ここが守れないと、次には進めません。「使ってないけど、ないとぜったいに困るホッチキスやのりなんかも、全部です。(安心して、ちゃんと敗者復活制度があるから。)ここまで終わったら、メールをください。 朋子 |
朋子さん 机の一番上の段です。自分でもびっくりです。赤ペン1本しか残ってません。 武志 |
びっくりでしょ? いらないもの箱に、今日の日付を書きましょう。それまでこの箱は部屋の片隅に置いて下さい。(押し入れの中ならもっと良いです。)もし、箱の中のものを使う場合は、使ったら机に戻してあげて下さい。(例:ホチキスがない・・・そういえば、いらないもの箱に入れたな。ごそごそ、あった。これはまた使うから、机に戻そう。)
明日は引き出しの2番目をやりましょう。いらないもの箱には、その都度日付を書きます。 とりあえず引き出しは今週で決着をつけて、最終日の日付から3カ月後には完全に処分しましょう。 朋子 |
10月10日
「机の中が片付いた感想はどお?」
「ほんとにびっくりです。ほとんど『いらないもの箱』に移動しちゃいました。」
「使ってもいない物に空間を支配されていたって事ね。」
「ところで、やよいさんの方は進んでますか?」
「あの子は時間かかりすぎ。まだ1年半しか住んでない部屋なのにものがあふれてる。おまけに、ひとつひとつ眺めては『わー、これ懐かしい。』とか『これは使ってないけど、絶対に捨てられない!』とか、あの調子じゃ部屋の整理で一生終えるんじゃないかと思う。」
「朋子さん大げさですよ。ところで、僕もやよいさんと同じことを考えていたんです。『使ってないけど捨てられないもの』や『3か月は使わなかったけど、どう考えても使う可能性があるもの』は、どうしたらいいんですか?」
「段ボールに入れて押し入れに突っ込むしかないわね。箱の上と横に、マジックで中身を書いておくこと。でもね、そうやって取っておいた箱を、何十年も開かないでいたってことも多いわよ。私も小学校時代のノートや絵の一部は取っておいてあるけど、大人になって開いたことは一回もない。」
「でも、捨てられませんよね。」
「そうね。だからこそ、本当に不要なものは思い切って処分すべきよ。使ってない筆記用具やノート、着てない衣類なんかは、迷うことなく処分。」
「はい、がんばってみます。来週は衣類をやっつけようと思います。」
「がんばってね。今日は、整理整頓をすることの意味を話すね。」
「時間短縮と心の安定、でしたよね。他にも理由があるんですか?」
「理由というより、やることの意味と表現したいな。
それはね、自分自身を大切にするということなの。」
「大切って、いまひとつよくわかりません。」
「若干誤解されるかもしれないけど、私の人生の中で一番重要で大切な人、それは自分よ。もちろん世の中には自分よりも人を大切にして生きてるような偉い人もいるけど、その人達だって自分が大切でないとは思わないはずね。
ここで武志くんに質問。
武志くんにとって、自分を除いて一番大切な人をイメージして。とっても美人で優しい恋人で、将来武志くんと結婚する女性なんかを考えていいよ。さあ、その大切な人のために、武志くんはどんな部屋を準備してあげたいですか?今の自分の部屋?違うよね。大切な人だから、落ち着いてて整頓されてて機能的で、そして清潔な部屋にしてあげたいよね。その人がもし虫歯だったら、『がまんしてればそのうちおさまるよ。』なんて言わないで、『悪くならないうちに、早めに歯医者に行った方がいいよ。』って言うよね。食べ物だって、新鮮で栄養のあるおいしいものを、多すぎず少なすぎず健康を維持できるように食べさせたいよね。
大切な人だから、できるだけいい環境の中で生活してほしい。これは自然な感情ね。
でも、実は一番大切な人である『自分自身』にはどうだろう。本当に大切な人なのに、散らかっていて、部屋の隅にはほこりがあって、タンスも押し入れもぐちゃぐちゃで何がどこにあるかもわからず、しかもひとつひとつの物が壊れてたり使えなかったりする。
食べ物だって、栄養なんか考えないで食事を抜いたり食べ過ぎたり。虫歯があっても、本当に痛くて我慢できなくなるまで医者にも連れて行かない。
これって、ほとんど虐待に近い仕打ちだと思わない?
今月のテーマは「整理整頓」と言ったけど、本当の意味のテーマは「自分を大切にする」ということなの。その第一歩が「整理整頓」というわけ。
大切な自分だから
健康にしてあげよう。良い食事ときちんとした運動をさせてあげよう。
調子が悪かったら医者に連れていこう。
高価でなくていいから、清潔でセンスのいい服を着せてあげよう。
整頓された、清潔な部屋で生活させよう。
きちんと睡眠を取らせてあげよう。
ちゃんと勉強させたり読書させたりして、成長させてあげよう。
良い仲間を作ってあげよう。
いろんな経験をさせて、「楽しくて充実した人生だ。」って言ってもらおう。
今の自分を見て、『ここに、自分の代わりに大切な人を置いたら、どう思うかな。」とイメージする。それだけで、自分のために何をすべきかわかるはず。」
「言われてみると、確かにそうですね。自分が大切な人だっていう意識はありましたけど、大切にしてなかったような気がします。」
「私がこのイメージを持ったのは、20歳くらいだったかな。もう本の題名も忘れたけど、何気なく買った本に『自分を大切に扱う具体的な行動』が書いてあったの。それを読んで、『私は私自身を大切にしてこなかったな。』って、恐ろしいくらいの罪悪感が湧いてきた。家に帰って、いつもの何倍も風呂で体洗って、パジャマも予備の物を着て、それから部屋の掃除を始めた。やよいとは違って、人並みにきれいにしてた部屋だったから、掃除に時間はかからなかってけどね。それからなぜかお湯を沸かして紅茶を飲んだの。ふーっと一息ついて、部屋をぐるりと見回して、「一番大切な人のために、自分ができる最高の環境かな。」って、、それから、「できる限りのことを自分にしてあげよう。」って思った。」
「その本、僕も読んでみたいですけど、題名わからないんですね。」
「うん、今にしてみれば惜しいことをしたかな。本のイメージはあるんだけど、題名は完全に忘れてる。なんだか大ベストセラーじゃなかったような気がするの。たまたま私の気持ちが本の内容とぴったりきたってことかもしれない。」
「ちょって残念ですけど、でも朋子さんの話を聞いたから、本を読んだのと同じことですね。」
「そうね、がんばって自分にいい環境といい人生を作ってあげてね。」