いきなり、意味不明の言葉が登場しました。
メタ認知とは、簡単に言うと
自分を客観的に見る能力
のことです。
メタ認知能力(自分を客観的に見る能力)が高い人は、
〇自分の言葉や行動を冷静に分析できる。 〇周囲の状況や感情に気づくことができ、配慮ある行動ができる。 〇トラブルや人間関係がうまくいかない原因を自分の中に見つけ、反省と改善を行うことができる。 つまり、周囲の状況と自分の言動をきちんと理解し、場に応じた行動を取ることができる。 だから、自分も周囲の人も人生がうまくいく。 |
これは、是非とも身につけたいですね。
メタ認知能力が低い人は、
〇周囲への配慮ある言動ができない。 〇相手を傷つける行動を取っても、気づかない。 〇自分の価値観を人に押し付けようとする。 〇自分の行動を反省できない。自分を正当化する。 簡単に言ってしまうと、わがままなお子様です。常に人とぶつかるから、不満を持って生きている人が多いです。ごく稀に、幸せに生きている人もいるようですが、その場合は周囲の人が悲惨な状況にある場合がほとんどです。 |
さて、この大切なメタ認知能力を、私はどうやって獲得したか。(いや、獲得できたとは言いきれません。どうやって、メタ認知に気づいたか。)昔の経験を話しますね。
それは、中学3年生の秋でした。なぜかクラスの何人かと、学校全体を使った「鬼ごっこ」をしてたんです。じゃんけんに勝って鬼にならずに済んだ私は、家庭科室に逃げ込みました。校舎の一番はじっこにあった家庭科室は、なぜか机とイスが奥に寄せられていました。私はその机を乗り越え、奥にあった大きな姿見(移動式の大きな鏡)の陰に隠れたのです。「ここなら絶対に見つかるはずはない。」そう確信できる場所でした。
その確信通り、鬼はやってきません。まさかこんなに遠い部屋の、しかも奥の鏡の裏に隠れてるとは誰も思わないでしょう。 私の作戦は大成功です。 しかし、そのおかげで、私は鏡に映った自分の姿を長い時間見続けることになったのです。いったい何十分だったのか、あるいは何分だったのか、もはや記憶がありません。でも、自分の中では「かなり長い時間、自分とにらめっこをしていた。」という記憶が残っています。 ろくに鏡など見ない少年です。自分の姿を見つめているうちに、変な気分になってきました。そして、自分のことを考え始めました。 「ここに映っている少年(つまり自分)が友達の中にいる姿って、何だか変。」「この少年がクラスの中にいるのも、変。」「自分は、自分以外の友達しか見えてなかったけど、友達は、自分のことをグループの一員として見ているんだろう。」「友達から見た自分て、どんな風に映ってるのかな。」「優しい人?気難しい人?普通の人?かっこいい?悪い?変人?」「みんなは自分のこと、好きなのかな?嫌われてるかな?」 結局、鬼はやってきませんでした。私は、喜んで隠れた場所から這い出して、鬼に見つかる場所に戻っていきました。でも、鏡の前で(外見も内面も)自分を見つめたひとときが、自分を大きく変えたのはまちがいありません。 |
それまでも、「自分はいやなやつだな。」なんて思ってはいませんでした。
というより、自分が人より優れているような錯覚すらありました。
それが、
「自分の言動が、周りを不快にさせているんじゃないか。」
「自分では気づかないだけで、独りよがりなんじゃないか。」
なんて考え出したのですから、精神的にストレスも感じたし、プレッシャーもありました。
自分が持っていた根拠のない自信も、ぐらつきました。
もしかしたら、何も考えない方が思い切って行動できたのかもしれません。
もし、あの時鏡の前で自分を振り返る経験をしなかったら、
とんでもない人間になっていたかもしれません。
人を不快にさせる言動をくり返しながら、
それでも自己反省することなく、
うまくいかないことを他人のせいにして、不満をぶつけていたかもしれません。
だから、鏡の前の経験は、自分を大きく成長させた瞬間として、何十年経った今でも覚えているんです。
人間の成長というのは、体力の向上のように、じわじわと積み重なる場合がほとんどです。
でも、人生の中で、(私の場合は)ほんの数回ですが、
つけていたサングラスを外した時のように、劇的に世界が変化する瞬間があるものです。
そんなチャンスを逃さず、自分を成長させたいものです。
ところで、そんな大切なメタ認知ですが、鍛えることはできそうです。
私がみなさんに薦めてきたのは、小説の中でも紹介した「他人の物語を作る。」というトレーニングです。
なぜ、これがメタ認知につながるのでしょうか。
メタ認知とは、自分を客観的に見る能力です。
いつもは自分が他人を見ているのですが、他人が自分を見ているイメージに心を切り替えるのです。
それには、まず「他人」をしっかり意識しなければなりません。
そのために、他人も自分と同じように生きているという実感を持つ必要があるのです。
実感を持つ方法のひとつが、「物語を作る。」という作業と、理解して下さい。
「いや、あんたはメタ認知できてないよ。周りに迷惑かけてるよ。」
こう言われたら困っちゃうし、ちょっとショックです。
でもまあ、こう考えよう。
鏡の経験があったから、ようやく自分は普通の人間に近づいた。
もちろんうまくいかないことだらけです。
でも、少なくとも、
上手くいかないときは、自分にも悪い所がある。
と考えるようになったことは、自分の成長だと思っています。