週刊や月刊の漫画、毎週放映されるアニメやドラマは、続きが待ち遠しいものです。途中で連載が中止になったり、特別番組のために放映が伸びたりすると、怒りに近い感情が芽生えます。集中して見ていたテレビ映画が停電で映らなくなったら、ゾッとします。
今回紹介する「村上海賊の娘」も、そんな気分にさせる小説。面白い、とにかく理屈抜きで面白い、痛快時代劇です。一度読んだらやめられない、かっぱえびせんのような物語と言えましょう。
瀬戸内海を縄張りに、地域の大名からも恐れられていた「村上水軍」。その当主・村上武吉には、男勝りの娘がいた。名前を景(きょう)という。一度は船を降り、普通の女性として生きる決意をした景だったが、再び立ち上がり、戦いの海に飛び込んでいく。一進一退の戦いに終止符を打つ「鬼手」とは何か。好敵手である眞鍋七五三兵衛との決戦の結末は。
面白い小説には、必ず次の条件が揃っています。
①ストーリーそのものの面白さ。
②的確に表現された登場人物の個性。(海賊たちの陽気さが、とても良い。)
小説には、「文体の巧さ、美しさ」も大切な要素ですが。この本はストーリーと人物の個性でぐいぐい進んでいく力強さがあります。(文体がへたという意味ではありません。)
さらに時代考証の的確さ。当時の世相や文化、水軍の武器に至るまで丁寧に描写されています。歴史考証の文章がストーリーの邪魔になるという感想もあるようですが、私の場合は、「これって本当にあった話なんだなあ。」と感動してしまいました。(第一次木更津合戦という史実に基づく話だそうな。この合戦のこと、詳しく調べてみたくなります。)
この小説、すぐに映画になると思っていましたが、未だにそんな兆しがありません。これは、どうしたことでしょう。