今から50年前の本ですが、当時の多くの若者をヨーロッパへと駆り立てた名作です。
(ちなみに、時代は少し遅れますが、も大きく影響を受け、遠くに広がる世界に気持ちを高ぶらせたものです。)
昭和30年代、まだ海外旅行が簡単にできなかった時代。
フルブライト留学制度を利用してアメリカに旅立った作者。
アメリカでの勉強を終えて向かったのはヨーロッパ、そしてアジアの国々。
そもそも彼はなぜ留学したのか。
「ひとつ、アメリカヘ行ってやろう、と私は思った。
理曲はしごく簡単であった。私はアメリカを見たくなったのである。
要するに、ただそれだけのことであった。」
その単純な動機。そして行動力。
一日1ドルで生活しながら旅を続ける逞しさ。遠い異文化の香り。
小田実は、まちがいなくその時代のヒーローでした。
日本のヒッピー第1号とも言える人物でした。
学生時代は特に、貧乏旅行に憧れたりするものです。
「一泊5万円の旅館に泊まってきた。」という人よりも、
「5万円で1か月旅行してきた。」という人物の方が尊敬されるものなのです。
(ちなみみ、私も学生時代は一日千円の旅行をしていましたが、上には上がいました。)
小田実は、世界を股にかけて「貧乏旅行」をしてきたのですから、
若者の尊敬を集めたことは当然です。
しかもこの本、文章にスピード感と臨場感があり、まるで自分が旅行しているような感覚になります。
あれから50年。人々はツアーで簡単に海外に出られるようになりました。
楽になった反面、小田実が歩いた道を辿ることは難しくなくなりました。
それでも、彼の行動とこの作品は、今でも光輝いています。
世界に出たいと思ったら。必読書のひとつと言えるでしょう。
さあ、800円で世界の旅に出かけよう!