学校って、つくづく不思議な世界だと感じることがあります。みんなが同じ時間に同じ服を着て登校し、服装がすこしおかしかったり、ネームプレートがついていなかったり、30秒遅れたりすることに異常と思えるような指導が入る。集会では話を理解したかどうかよりも、縦と横がそろって前を向いていることに神経を使う。勉強に興味を持てず授業も投げやりなのに、それでも高校には行きたいと塾に通う中学生。なぜかすべてに優先され、休日の家族の行事など吹き飛ばしてしまう部活動。

そんな異空間である学校は、精神のひずみから周囲への優しさを欠いた言動も多く見られます。ある人は、大人への反発を強め、非行や校内暴力、問題行動に走る。ある人は、そのとがった気持ちを仲間にぶつけてしまう。ある人は、そんな空間に耐えられず、逃げ出す。いじめや仲間外れの問題は、新聞やネットのニュースをにぎわしています。

学校って、すばらしいことと異常なことが混在している空間のような気がしてなりません。

 

紹介する「かがみの孤城」は、不登校になってしまった中学生の物語。

あなたを、助けたい。

居場所をなくした7人が出会ったのは、不思議な城だった。

すべてが明らかになるとき、あなたは驚きとともに何度も涙する (本のおび より)

学校で仲間外れにされて、家に閉じこもるようになった安西こころ。ある日、部屋の鏡が突然光り始めた。鏡が光るときにだけ通り抜けられるその先の世界。そこには、こころと同じように中学校に行けなかった7人が集められていた。

鏡の中の城で7人は、あるときは協力し、ある時は反目し合い、たった一人にだけ与えられる「願いの鍵」を探し続ける。期限は3月30日。

いろいろな事情で学校に行けなくなった7人ひとりひとりの切なさ、取り巻く大人の優しさと迷い、謎のオオカミさまとはいったい誰なのか。思春期の複雑な心情をミステリーに乗せて、一気に読ませる傑作です。苦しい思いも持って集まった7人の話だけど、読み終わった時には爽やかに近い感覚が残ります。

読み進めると、次第に明らかになる7人の本当の姿と城の意味。作者の辻村さんは、最終章で明かされるヒントを随所にちりばめています。「なるほど、そうだったのか。」と唸らされる設定と文章の巧みさは、どの本を読んでも「すごい作家だなあ。」と感心してしまいます。

今、壁にぶつかっている中高生、そんな中高生のそばにいる大人に読んでほしい一冊。

この本を読んで気に入ったら、「スロウハイツの神様」も読んでみましょう。こちらもすばらしい出来ばえの作品です。

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